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声量豊かな地声を得るために:チェストボイス(胸声)の鍛え方、練習方法

      2017/05/08

ボイトレ情報

ボイトレ情報というと、どうも高音域の発声法についての情報が多い気がします。高音発声はボーカルにとって最も重大な課題の一つなので当然といえば当然なのですが、一方で、「もっと太く豊かな音色で歌いたい」「魅力的な地声で歌いたい」という願望を持つ方もいるはず。たとえば、アイアン・メイデンのブルース・ディッキンソンなんかは地声で歌うパートがとても魅力的だったりします。

さて、ボーカル界で地声といえば、「チェストボイス(胸声)」です。文字通り「胸に響く声」で、いわゆる普通の話し声の延長上にあるものなので、ミックス/ヘッドに関する情報に比べて手薄な感じもいたします。

今回は、おなじみニューヨークのボーカルコーチJustin Stoneyさんによる「チェストボイス」のYoutube講座がありましたので、こちらをレポートし、チェストボイスについて考えていきたいと思います。

改めて、チェストボイスとは

Stoneyさんは、以下の3つで「チェストボイス」を説明しています。

1.「話し声」

ヘッドボイスやファルセット、ボーカルフライで話す人もいなくはないですが、たいていの人は普段チェストボイスで話しています。「話声=チェストボイス」ということですね。
ですので、普通に話すことができる、ということは、「チェストボイス」で歌うことができる、ということになります。シンプル。

2.thyroarytenoid muscle(甲状披裂筋)が優勢

つぎに解剖的な部分のお話です。
thyroarytenoid muscle(甲状披裂筋、TA筋とも)という筋肉が、チェストボイスにって重要な役割を果たします。

甲状披裂筋

声帯を短縮、弛緩させる働きをするのがこの筋肉です。「声帯が短く、ゆるくなる」とき、ピッチは低くなります。弦楽器をやる人はイメージしやすいかもです。ダウンチューニングしたギターは弦ダルダルでしょ?
なので、この甲状披裂筋がよく働いている状態が、チェストボイス、ということですね。

3.ボーカルの強さに影響

短く、厚くなった声帯、というのは、「CQ(closed quotient)」を増大させるそうです。

CQ…ちょっと詳しくはわからないですが Electroglottography (EGG)という声帯振動の状態を調べる方法で用いられる概念のようです。欧米では音声の研究、臨床に広く用いられるそうですね。

CQ
引用:http://images.slideplayer.com/24/7237430/slides/slide_24.jpg

さて、ここでは、CQとは、振動の中で、声帯がくっついている間の時間の長さ、を意味します。
「CQが高い」というのは、それだけ2枚の声帯の襞が多く接触している、ということなので、より強い声になる、というわけです。
単にしゃべる、というだけでなく、以下のような声を発するのに有用ですね。

  • シャウト
  • 遠くの人を呼掛ける声
  • 演説の声
  • ベルティング

チェストボイスの音域

だいたい、低音から中音ぐらいの声域になります。
男声ですと、E4からG4くらいまで、女声ですと、A4からC5あたりまでの声域がチェストです。
もちろん、個人差はあると思いますので参考程度にどうぞ。

チェストボイスのスタイル

チェストボイスでの歌声は、なによりその強い音色が魅力です。

歴史的には、オペラの男声が基本チェストボイスで歌われてきました。一方、オペラの女声はヘッドボイスですね。

また、現代のポピュラー、R&Bなんかでは女声もチェストボイスが使われます。 対照的に、男声のポップスではオペラほどチェストボイス一本、というわけではないそうです。

参考例:Ol Man River / Jerome Kern


フランク・シナトラのバージョンです。低音が素敵ですね。
Stoneyさんもいつになくオペラティックに歌っています。今回の場合、軽く歌うのは正しくないそうです。

次に、このオペラティックなチェストの歌い方を、もう少しポップスよりの音色にしたバージョンも例示してくれています。チェストボイスは必ずしもオペラ的歌い方、というわけではない、ということですね。

チェストボイスのTips

喉仏の位置を自然に低い位置に保つ

喉仏の位置が下がると、声帯が緩むので、より強い声のために、アドバンテージがあるそうです。
高い喉仏の位置でチェストボイスを発声すると、音がタイトになります。ですので、太く豊かな音色を得たい場合は低い位置に喉仏を保つことが有用、とのことです。

「チェストボイス」と呼ばれる所以を考える

チェストやらヘッドやらミックスやら、ボイトレ界はなにかと用語が多く混乱しがちです。まして「甲状披裂筋が〜」といっても?となってしましますよね。

そういうときには、チェストボイスの語源に立ち返ってみることもよいでしょう。そう、「チェスト(=胸)」「ボイス(=声)」です。胸に響く声、だからそう呼ばれるんですね。

ブレスは大雑把に

ボイトレ界で特に大切といわれるブレス。よいブレステクニックは、ゆっくり、小さく、安定的に息をせねば・・・というような感じで神経を使います。

一方、チェストボイスの場合は少し異なるようです。大胆に、激しくブレスすることを、ほかの声区のときより少しだけ意識しましょう、とのことです。

チェストボイスを恐れない

チェストボイスは悪いんじゃないか、過剰じゃないか・・・と歌を学ぶと心配しすぎてしまうこともあります。チェストの際は、楽しんでやりましょう。

気楽にやろう

続けてメンタル面です。チェストボイスは悪いと考えてしまう人がいるが、そんなことはないそうです。
チェストボイスが悪となるのは、次の場合だけです:

  • チェストボイスで常に歌う
  • 無理やりチェストで大声
  • むりやりチェストで高音
  • やりすぎ

ほかの声区をトレーニングしつつ、チェストは肩の力を抜いてやりましょう。

チェストボイスの訓練方法

「YOH」の発声で5度1度を動くスケール練習をします。この際、意識して太ましいオペラ的チェストで発声しましょう。

まとめ

チェストボイスは基本話し声。あまり難しく考えずに発声しよう

しかし太く豊かな音色を得るには喉仏を下げ発声するトレーニングが必要

というところでしょうか。
「地声」というと、どうしても「地声なんて誰だってできるわい!いいから高音を歌う方法を…」となりがちなんですが、声の良し悪しは地声で決まるわけで、より「良い(=太い、強い、など)」チェストボイスを得るために、という観点ではしっかり練習が必要ですね。
根本的に地声を鍛えていきたい、という方は以下の書籍が参考になるかもです。

【書評】『最高の声を手に入れるボイストレーニング フースラーメソード入門(武田梵声、日本実業出版社)』

ではまた。