ミックスボイスの出し方のコツ、練習方法
2017/05/20
「ミックスボイス」。ボイトレの話といえばコレ!というぐらいには頻出ワードですよね。
しかし、調べていくとどうやら様々な流派があり、イマイチどういうことなのかがよく分からない、と感じることも。
そんな感じで「ミックス」に関してはモヤっとしていた部分があったんですが、今回おなじみジャスティン・ストーニーさんの解説を聞いて、「なるほど!」と思う部分がありましたので、共有します。
改めて、ミックスボイスとは
一言で言うと、チェストボイスの強さ(Strength)とヘッドボイスの 柔軟性(flexibility)をブレンドすることだ、とのことです。
「?」という感じですが、チェストボイスの良さである声の強度と、ヘッドボイスの良さである柔軟性を合わせて出すことによって、健康的かつ持続的な発声を得よう、という概念になります。
そんな感じで大変有用なので、90%のボーカリストは大体ミックスしてるのでは、というのがストーニーさんの見立てです。
チェストボイス、ヘッドボイスそれぞれの解説のエントリーもご参照くださいね。
ミックスボイスはどのように発声されるのか
筋肉的の動き
ミックスはチェストの筋肉とヘッドの筋肉が同時に動くそうです。いわゆる甲状披裂筋(ThyroArytenoid, TA)と輪状甲状筋(CricoThyroid, CT)になりますね。
喉頭を側面から見るとこんな感じ。
また、上から見るとこんな感じです。
輪状甲状筋が「声帯をひっぱる」筋肉、甲状披裂筋が「声帯をとじる」筋肉とざっくり理解できそうです。
これらが連動的に動くことで、ミックスボイスの発声が成立するようですね。
共鳴は頭に
ミックスボイスでも、共鳴は重要なファクターになるそうです。
声帯へのプレッシャーを少なくし、ヘッドの共鳴を使うことが、ミックスの特徴になります。
ミックスボイスは一種類ではない
ミックスは言葉が独り歩きしている側面があり、様々な流派で色々な説明をされているので、「ミックスボイスとは一体なんなのか」迷いがちです。
というわけで、
「ミックスって何」
「この声はミックス?」
「ミックスがわからない・・・」
というような嘆きの声がネットに溢れかえるわけです。
ストーニーさん曰く、ミックスの種類はひとつではない、といいます。
というのも、チェストとヘッドのブレンド具合によって、無数の音色の「ミックスボイス」が生まれうるからです。
たとえば、強度が適度に加えられれば、チェスト優勢のミックスとなります。
また、中間くらいなら、50/50のミックス、強度を失わない程度に軽くすると、ヘッドが優勢のミックス…というような感じです。
参考例:House of the Rising Sun / Classic Folk Song
Animalsのバージョンが有名なこの曲で、ミックスボイスのデモンストレーションを行ってくれています。
上記の通りミックスはかなりグラデーションを持った概念なので、定義できっちりはめるよりは参考例を聴いてなんとなく理解していくのが良さそうです。
この曲では、チェスト優勢のミックスと、ヘッド優勢のミックスといずれも使われておるので、良い例なんだとか。
ミックス発声のための5Tips
1.声帯閉鎖のコントロール
ミックスを体得するには、声帯の閉鎖をコントロールできる必要があるそうです。
声帯をタイトに閉鎖したり、緩めたりを自在にコントロールできるようにしましょう。
2.呼吸を忘れない
声帯の動きに気を取られますが、呼吸も大切です。忘れがちですが、良い空気の流れを損なわないように!
3.響はヘッドに
音を口から外に出すのではなく、鼻腔・頭に響かせるという意識を持ちましょう。
4.ラウドに歌うことではない
ミックスを体得するためにボリュームを得ようとすることは良い解決方法ではありません。張り上げ注意です。
5.裏返りを恐れない
練習において、裏返りは悪いことではないそうです。なぜならそれは、CT(輪状甲状筋)がTA(甲状披裂筋)の働きに勝ったということだから、です。
もちろんステージ上では好ましくありませんが、ミックスを練習しているうちは積極的に裏返りさせていくべきだとか。
ミックスボイスの練習方法
「GUUN-NUUN」という発音で、8度5度1度とスケール移動する練習法です。
- 「g」は声帯に強度を加え
- 「u」は響を頭に移行しつつ、喉頭を支える
- 「n」で頭・鼻腔で共鳴
の3ステップです。
練習の間は、裏返りOKですが、最終ゴールは、「g」の時のソリッドな音を維持して発声することだそうです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ひとつ、重要だと感じたのは、「ミックスは一種類だけではない」ということですね。言葉で定義付けられると、ぼくたちはどうしても「唯一の、完璧なミックスボイス」というのを考えてしまいがちですが、幅のある概念として理解していくことがよさそうです。
またもう一つポイントに感じたのは、ミックスが「頭で共鳴する高音発声」という点です。以前、地声を持ち上げる「ベルティング」という高音発声を扱いましたが、こちらでは響は頭でなく口から出す、ということでした。
筋肉が複雑に連動することで可能になる発声ですので、なかなかゴールがないミックスですが、日々意識して練習していきたいですね。
ではまた。
追記2017/5/20
ミックスボイスを練習する一つの方法として、「メッサ・ディ・ヴォーチェ(Messa Di Voce)」があります。小さい弱い音から大きい音までをスムーズにつなぐ練習方法で、声帯の操作性を高めるためミックスボイスの練習にも有用なんだそうな。よろしければ合わせてご確認下さいね。