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LOUDNESS二井原実とB’z稲葉浩志が語る日本人のハードロックの歌い方

      2017/04/29

ボイトレ情報



LOUDNESS二井原さんとB’z稲葉さんの対談。
いやあこんな動画があったんですね・・・。
両方のファンの方には常識だったんでしょうか。

お二人といえば、日本のロックボーカルの世界を切り開き、今なお走り続けるトップランナーなのはご存知の通り。

「英語圏で生まれたHR/HMを、われわれ日本人がどのように歌うのか。」
パイオニアである彼らは、四苦八苦してその方法論を築いてきました。

この対談では、まさにそんな、現場で培われたリアルなノウハウや悩み、対処法が語られております。ロック歌いたい諸氏にとって、ぼくのブログの666倍は価値のある動画なので皆さん是非ご覧になってくださいね。

1時間と長い対談になっておりますので、ぼくとしては特に当サイトの骨子と密接な、「日本人がハードロックを歌うこと」という点に関して、少し整理しながら考察をしていきたいと思います。

ハイトーン発声という問題

レッドツェッペリンの登場以後、洋楽ハードロックは男声ハイトーンボーカルが定番となりました。

一方、日本においては、70年代初頭のジョー山中や歌謡界のクリスタルキングなど一部の例外を除き、ロック的なアプローチでハイトーンが歌われることは稀でした。

そんな最中の80年代初頭、登場したのがラウドネスでした。動画中で二井原さんは次のように語っています。

ぼくみたいなタイプのボーカリストがいなかったんですよ。日本でそれまで。
もちろん、JJさん、紫のボーカルの人とか、(山本)恭二さんはボーカリストではないけれど。ハードロックバンドはいたんですけど、いわゆる「ワォッッ!!!」みたいなボーカリストがいなかったんで。

そんなハイトーンの持ち主だった二井原さんですが、どうやらデビュー前からその声を買われて京都のソウルバンドで活動されたりしていたそうです。話しぶりから、どうやらもともとハイトーンで歌えてたんですね。(関西ではこんな歌い方をする人が多かった、とも)。しゃべり声も高いですし。

しかし、過酷なライブツアーやロックな私生活がたたり、90年代には声が全然でなくなってしまったのだとか。それはもう「オクターブが下がるくらい」、といっています。
そこで30半ばの二井原さんは、はじめて「ボイストレーニング」をはじめたらしいですね。

はじめて「ボイトレ」の存在に気づいたのは、TNTとの楽屋裏での出来事だそうです。 TNTのフロントマン、トニー・ハーネルがライブ前、いつもトイレにこもっていたので、気になった二井原さんはその後をついていったのだとか。

すると、トニー・ハーネルは、トイレで40分くらい、やってたんだそうです。「リップロール」。唇をプルプルさせるアレです。

当時すぐにはわからなかったものの、10数年後様々な情報を集めていく中で、その有用性を見出して、実践していったらしいです。
声が絶不調だった頃、なかなかスムーズにいかなかったようですが、1年半かけて根気よくやった結果、だんだんと力みが取れて崩れたフォームが直り、最近では全盛期のキーを取り戻したんだそうです。誇張でなく、実際にキーが戻ってるんで説得力が違います。

ハイトーンに力みが不要で、いかに柔軟性を持って歌えるかが大切なのか、よくわかるエピソードです。

「リラックス」の効能

稲葉さんは、若い頃、本番前のウォームアップはとにかくがなりたてていたそうです。
が、近年はやはりとにかくリラックスさせることにフォーカスしてるんだとか。リップロールしかり、あとはファルセットでの歌唱をするようです。

ファルセットは甲状輪状筋を駆動させ声帯を伸ばして柔軟性を高める効果がある、というのは以前から度々ボイトレTIPSの中でも登場していますが、ハイトーンのシンガーにはやはりこのウォームアップは欠かせないようですね。

しっかりとウォームアップしてリラックスすることは、一方でメンタル的な効果もあります。
「でるか、でないか」というギリギリのハイトーンは二井原さん、稲葉さんクラスでも心配されるようで、そんな状況の中、本番でしっかりと音をヒットさせるために心を整えるんですね。去年流行した、「ルーティン」に近いアレかもしれません。

「声質」は天然か後天的か

二井原さんいわく、稲葉さんとスティーブン・タイラーの声質は似ているようです。うん、確かに解る気がします。
「男前で、大衆に支持される声」という表現をしていますね。

コレに対して、ナビゲーターの政則さんが面白い議題を投げかけいます。

確かに、ある方が言っていたけれども、歌は練習すれば上手くなっていくと。
けど、声質は変えられない。生まれ持っての声質と。

楽器と違って交換不能な喉という器官から繰り出される「声」、これの質ってなんなんでしょうか。
多くの人に愛される声、そうではないキャラクターの強い声があり、それぞれ生まれ持ったものがあるんじゃないかという言われ方をしていますが、これは確かに、と思う面があります。

一方で、稲葉さんは「声質」に関して、年齢的なもの含め、後天的な変化を感じているようです。

動画中では直接言及されていませんが、一理あるな、と感じるのがこちら。
大学生時代、稲葉さんはラウドネスのコピーバンドをしていたそうですね。その当時の?動画がYoutubeにあります。

既にめっちゃ上手いですやん・・・。
しかしながら、今の「B’z」という感じの歌声ではなく、ビブラートを聴かせた 、王道メタルの歌い方です。

しかし、対談動画の11:50前後で、最近「Crazy Nights」をカバーしている動画があるんですが、こちらはまさに「B’z」という感じの声です。確かに長い活動を経て、「B’zの声質」が培われてきたことがわかります。

英語の喉の使い方

現在は大分状況が変わったものの、80年代当時のロックといえば英語が基本。
当時活動していたLOUDNESSは、そんな時勢の中で英語詞の楽曲でアメリカ進出を果たしました。

そんな二井原さんいわく、「英語で歌うときと日本語で歌うときは、喉の響きが違う」といいます。
これは、「RとL」「TH」みたいな、いわゆる「発音」の問題とは違うようです。

これは、二井原さん自身は「ゲロ声」と呼んでいるそうですが、「オェ」となるような、低音の響きです。日本語に比べ、 英語の発声は重心が下になるようです。その成分がネイティブの英語の音には多いのでは、とおしゃっています。

二井原さん自身がデモンストレーションしてくれていますが、なるほど、確かに重心が下になる発声でしゃべるほうが、英語っぽく聞こえます。
これはいわゆる「チェストボイス」に関するお話とも絡んできそうですが、「話し声」として表現される「チェストボイス」は、もしかすると普段の日本語の発声にはそもそもないのかもしれませんね。

英語の表現、日本語の表現

一方、稲葉さんは、英語と日本語について、その表現面に着目します。
稲葉さんは、ニュアンスなどを表現するには日本語の方が良いなあ、と感じているそうです。母国語ですからね。

とはいえ、稲葉さんが着目しているのは、「子音」と「母音」です。
ご存知の通り、日本語は非常に母音の多い言語です。ゆえに、ロックの場合、高いキーを日本語で歌うと、母音が多くて、押し出さなければいけないので、喉に負担がかかるのでは、とおっしゃっています。
ちゃんと英語が発音できることが前提ですが、高いキーの曲は子音の多い英語詞のほうが歌いやすい、ということのようです。

まとめ

  • ハイトーンを歌う際は、万国共通のリップロールを根気よくやって力みをとろう。
  • 「声質」は先天的な部分がある。が、一方でその多くは後天的に培われる
  • 英語で歌う発声は、日本語の場合と異なり重心が下になる

なかなかに長い動画なので、ほんの一部分を抜粋、編集してまとめております。動画の進行とは順不同なのでご容赦を。
しかしながら、ロックボーカルを志す人にとって大変栄養が豊富で、しかも面白い動画です。
バンドのボーカルというのは、花形な一面もありますが一方で孤独な面があります。ボーカルの悩みの大半である「発声」の問題は、バンドメンバーにはなかなか理解しにくいためです。

この動画では、日本を代表するロックボーカリスト二人が、ライブでの話から制作の話まで苦悩した部分なんかもかなりリアルに語り合っております。歌声に悩んでいる方は、是非一度ご覧になってみてくださいね。

ではまた。