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「声量がない」と言われる人は試してみよう、「声が前に出る」ボーカルトレーニング

   

ボイトレ情報

カラオケやステージで歌を歌っていても、イマイチ声が通らない…そんな悩みをお持ちの方は少なくないかと存じます。

こうした声の方は「声が聞こえない、声量がない」と他の人から言われがちです。そのため、「声量を上げる」ことに有用とされるトレーニング、例えば足上げ腹筋をしてみたり、肺活量を増やすべくランニングに励んだり…。また、声量増強といえば、よく「喉仏を落とし、朗々と響かせるように歌う」と良いと言われるので、それに準じてトレーニングするも、イマイチ効果が出ず、どうすればいいのやら…と、悩まれている方、いらっしゃるのではないでしょうか。

そんな方に是非一度試してみてほしいのが、今回ご紹介する「声を前に出す、抜けるようにする」というトレーニングです。これは、声の高域を強調することで「声を人の耳に届きやすくする」という声づくりの方法で、同じくらいの音量でも抜群に声が聴きやすくなります。

ということで本日は、ニューヨークのボーカルコーチ、ジャスティン・ストーニーさんの動画を見ながら、そんな「通る声、よく聞こえる声」について学んでいきたいと思います。

「声を前に出す」とは

声を前に出す」というのは些か曖昧で、あまりそういった表現は好まない、とジャスティンさん。
確かに、バンドやらコーラスの指導やら、恐らく色々なところで「声を前に出す」という表現が使われますが、大変多くの含みがあるため中々定義付けは難しいように思えますね。

しかしながら、「声を前に出す」ということは、一つ大きな特徴があります。それは、「明るい音色≒重く、暗い音ではない音色」で発声する、ということです。この「明るい音色」を得る方法について、ストーニーさんは動画を通じていくつかの手法を紹介しています。

  • TWANGの拡大
  • ラリンクスを上げる
  • 口をワイドに広げる
  • 舌を前に出す
  • 軟口蓋を下げ鼻腔共鳴を高める
  • 声帯の接触を強める

「声を前に出す」を定義する用語:フォルマント

「前に出る声、通る声」を考える上で、重要な概念が「フォルマント」というものだそうです。
フォルマントとは、声管(Vocal Tract)での共鳴のことだそう。ここでの共振周波数が上昇した時、つまり、高い倍音が含まれる時、「明るい/前に出る」サウンドができるとのこと。
つまるところ、高域が強調される時、声は「よく通る」音になる、ということですね。

ちなみに、オペラシンガーなどは、この「明るさ」と「暗さ」を上手にバランスをとって表現するそうですよ。イタリア語で「Chiaroscuro」というそうです。

デモンストレーション

Cole Porterの「Night and Day」という曲でのデモンストレーションです。
「〈暗い〉と〈明るい〉を行き来する好例」だそうで、
〈暗い〉≒Oscuro=ナイト、〈明るい〉=Chiaro=デイ
というように対比させて歌ってくれています。ここで、〈明るい声〉というのがどういったものか、なんとなく理解できるのではないでしょうか。

どのように「前に出る、よく通る」要素を加えるか

さて、ここまでで、明るい声、ひいては「前に出る、よく通る声」というのがどういったものか、わかったのではないかと思います。では、実際どういったアプローチでこういった音色を作っていけばよいのか、ということについて、以下の6つのアプローチが紹介されています。

TWANG

「TWANG」−「鼻声」とも訳されます。以前のエントリーで紹介したとおり、ラリンクスの上部を狭め、より空間を小さくして呼気を流すような発声法で、ブロードウェイシンガーやロックシンガー、ときにはオペラシンガーの声の中にその要素が見て取れるそう。

声を明るく抜け良くする鍵は、「鼻声」?

以前の動画では典型的なTWANGの発声法として「競りの販売人」が挙げられていました。
喧騒の中でひときわ大きく正確にメッセージを伝えなければいけない彼らの発声の中で、「前に出る、よく通る」技術が使われているとのは理に適っているように思えます。

ハイラリンクス

ハイラリンクス、つまり、「喉仏を高く」することで、声は高域が強調され明るくなります。
ボイトレの世界では「喉仏を低く保ちましょう」ということがよく言われますが、ストーニーさんいわく、喉仏のポジションには、良いも悪いもないそうです。しかし音色が変わることで適するスタイルが変わってくるので、例えばポップに歌いたい場合は高めに、オペラティックに歌いたい場合は低めに設定すると良いでしょう。

口を広げる

声は、口を広げれば明るく、狭めれば暗くなります。

しかしながら、ストーニーさんいわく、「口を広げる」方法は、「声の通りを良くする」ことに関して、最後の選択肢であるべきだそうです。
なぜならば、「口を広げる」ことで、悪い声のクセを助長し、無用な声の張り上げにつながりやすい傾向があるからなんだとか。スタイルとしてこだわりが無いのであればまずは他の方法から試してみましょう。

舌を前に

舌を前にすれば明るく、低めにとれば暗くなります。

勿論、常に舌を常に前にするのは困難ですが、多くのシンガーは歌っている最中に舌をずっと下げている傾向があり、そのために、響きが暗く、喉やら顎やらに力が入っていてしまうことがあるのだとか。

そういえばハードロック・ボイストレーナーのケン・タンプリンさんは舌を極端に前に出していますが、だからこそあの抜群の声の通りなのでしょうか。

鼻腔共鳴

軟口蓋は常に上げよう、という発声指導はよく言われますが、こういった指導は今や時代遅れのものとなっているようです。今日重要なのは、むしろ「鼻腔共鳴を得る」というところでしょうか。(多分、「軟口蓋を下げて」というニュアンスが含まれるものと思いますが、ストーニーさんはそこまで言及してませんね。)鼻腔共鳴は、声の健康や柔軟性だけでなく、声の通りにも重要です。
見つけ方としては、「M」「N」「NG」の子音を試してみると良いそうです。母音だと軟口蓋は上がってしまいますが、これらの3つの子音では鼻腔共鳴をしっかり引き出すことができるそうです。

声帯の接触

声帯の開いた、ブレッシーなトーンが間違っているわけではありませんが、より「通る、前に出る声」を志向するならば、声帯を接触させる方向を模索しましょう、とのこと。ただしやりすぎればよいというわけでもなく、開きすぎず、閉じすぎず最も「鳴る」塩梅をみつけるべきだとも仰っていますね。

まとめ

「声が聞こえない」と言われる人は、「通る、前に出る声」を意識してみる

「通る、前に出る声」とは、高域の強調された、明るい声質

5つのテクニックで声の通りを調整(TWANG、ハイラリンクス、口を広げる、鼻腔共鳴、声帯接触)

いずれのテクニックも現在のボイストレーニングの通説からすると「悪声」に分類されるものかもしれません。
しかしながら、声が重たく、通りが悪い傾向があるのであれば、これらの「前に出す」要素を加えてみるとすんなり悩みが解消してしまったりします。「良い」とされる声だけでなく、たくさんの声を扱えることがとても重要なのは、こういったことがあるから、とも言えそうです。

しかしながら、ストーニーさんも指摘されているとおり、一度に多くのテクニックを使って歌うのは避けるべきでしょう。声の響きが高域 寄りすぎてしまうので、歌声としては使えるシーンが限定的なものになってしまいます。個人的な感覚としては、「通る要素」を加えすぎると今度は声の鳴りがスポイルされていく感じがありますね。低域の方法(ローラリンクス)と組み合わせ、自分の声がバランス良く鳴る塩梅を見つけ出していくのがよいかと!

ではまた。