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【感想】『ゴールをぶっ壊せ 夢の向こう側までたどり着く技術/影山ヒロノブ』【書評】

   

ボーカルライフ

こんばんは。最近はイマイチ喉の調子が振るわないので、歌の練習はお休みして本ばかり読んでいます。
中でも、特にエモかったのが、アニソンシンガー影山ヒロノブさんの自伝的な新書『ゴールをぶっ壊せ 夢の向こう側までたどり着く技術』


ゴールをぶっ壊せ – 夢の向こう側までたどり着く技術 (中公新書ラクレ)[Amazon]

当サイトを見ている方ならご存知の方が多いでしょうが、この歌を歌っている人です↓

今でこそアニソン界のパイオニアとして知られる影山さんですが、その道のりは決して順風満帆なものではありませんでした。
ロックバンドLAZYのボーカリストとしてデビューし人気を博すものの、バンド解散後のソロ活動は全く売れず、音楽活動の継続が困難に陥ります。
しかし、そこからアルバイトで生計を立てつつ地道にライブ活動を続け、アニソンシンガーとして再びシーンに舞い戻り、現在では、日本はもとより世界で活躍しています。

今回読んだ『ゴールをぶっ壊せ 夢の向こう側までたどり着く技術』では、そんな影山さんの半生が軽妙な語り口で記されています。
実は90年代末まで工事現場で働いていて最後は建設会社を設立するまでになっていたとか、とにかく強烈なエピソードが満載なのですが、個人的にぶっ刺さったのはこの逆転劇を支えた影山さんの「考え方」です。なので、この記事では、そんな「考え方」を、感想踏まえ掻い摘んでご紹介したいと思います。シンガー志望の人にはもちろん、何かに向けてゴリゴリ走っている人にはきっと刺さるハズなので、ぜひご一読いただければ!

「夢≒目標」をもつ

「夢をもつ」ことに対して、異論を唱える人はそうはいないでしょう。しかしながら、具体的な「目標」として「夢」を捉えることは、とても難しいことのように思います。影山さんは、LAZYでシンガーとしてデビューをしていますが、実はシンガーになったのもメンバーの中で一番高い声が出るからという理由だったり、割りと成り行きで活動していて、「これがやりたい」という強い「夢」はなかったようです。
これが問題になるのはバンド解散後で、「ロックで天下取ったる」という強い意志を持った高崎・樋口さんのLOUDNESSの快進撃の一方、影山さんはソロデビューをするものの全然鳴かず飛ばずだったようです。
そんなどん底のなか、影山さんは「歌を歌いつづけたい」という「夢」をはっきりと自覚することになります。曰く、「ビッグになりたい」「金持ちになりたい」「モテたい」といった枝葉を取り除いた、「シンプルな夢」です。このシンプルで心からの強い自覚は、「夢物語」を具体的な「目標」にして、その後のアクションを支えていくことになります。

「夢」に対して、「手段」は選ばない

「歌い続ける」という夢のため、影山さんが行ったのが、「とにかくライブ」というものでした。年間100本以上を、ノーギャラで行っていきます。一度は華々しい世界で活躍していた影山さんにはとても大きな選択だったことだろうと思います。しかし、「歌い続ける」という夢のためには必要な選択でした。
また、ノーギャラでは生活ができないので、工事現場での仕事をしていくことになります。これも元アイドルとしては苦渋の選択だったようですが、「築いたイメージにいつまでも囚われていては、ミュージシャンとしても一人の男としても生き残れないのだから仕方がない」と新しい世界に飛び込んでいきます。
そしてしばらくして、アニメの主題歌の仕事の話が飛び込むようになります。当時は未だ「アニソン」という言葉さえ存在しない位に世間の関心が低く、あくまで「子供向け」との認識が強く普通のポップスやロックよりも下に見られていた時代。そんな中でも、「子供向け」と侮らず着実に仕事をこなしました。
いずれも、当時のロックシンガーとしてはカッコ悪い「手段」だったかもしれません。しかし、「歌い続ける」という夢があったから、影山さんはそれぞれに真摯に向き合いました。「電撃戦隊チェンジマン」でアニソン(厳密には違う…?)シンガーとして再出発をしてからの快進撃は皆さんもご存知の通りで、「鳥人戦隊ジェットマン」「聖闘士星矢」「ドラゴンボールZ」と数多くの主題歌を手がけていきます。

「夢」をアップデートして、走り続ける

アニソンシンガーとしてのポジションを確立し、「歌い続ける」という「夢」はほとんど達成しました。
では、そこが「ゴール」で終わりかといえばそんなことはありません。「真のアニソンを作り、歌い継ぐ」コンセプトを掲げたJam Projectを結成、そして、徐々に世界にアニソンが浸透していくのと並行して、「世界進出」や「武道館公演」など、新たな「夢」として描いていきます。ひとつの「夢」を達成したら、新たなフロンティアを見つけて「夢」と定め走り続けます。

変化が激しい世界であることがよくわかっているのに、動かない「ゴール」を定めてしまえば、自分の未来を限定してしまうことになりかねません。p185

影山さんが同世代のアニソンシンガーの中でもひときわ輝いて見えるのは、今もまさに「走り続けているから」だろうと思います。自分で「ゴール」を決めず、「夢」を達成したら次の「夢」へと。本書のタイトル、「ゴールをぶっ壊せ」にはそういった意図が込められています。 すっごい強いです。

まとめ

どん底のときこそ、心からの「夢≒目標」が立ち現れる

イメージにとらわれて「手段」を選ぶ、というようなことはしない

「夢」を達成したら次の「夢」に向けて走り続ける

影山さんも書かれていますが、「運がよかった」面は多分にあると思います。
しかし、その「運」を捕まえたのは、影山さん自身の「意志の強さ」みたいなものではないかなぁと。スピリチュアルなようにも聞こえますが、意志のないところには何も集まってこないんだとぼくは思いました…。

音楽やアニソンを取り巻く環境は、影山さんの時代と現代で大きく異なるので、影山さんの取った手法そのもの(例えばとにかくライブする)が現在もそのまま有効であるとは限りません。しかし、「夢を描き、それに合う手段を選び、達成したら次の夢に向けて走る」という「考え方」自体は、誰しも考えさせられるものではないかなぁと思います。多分この「考え方」こそが、本書のタイトルにある「夢の向こう側までたどり着く技術」なんですね。

200ページ位のとても読みやすい新書ですが、影山さんの歌声同様、熱い言葉の連続で思わず涙がこぼれます。
シンガーはもちろんのこと、何かを志す人ならばグサグサと刺さる一冊。

また、詳細は取り上げていませんが、影山さんは日本のハードロックとアニソンの黎明期を駆け抜けてきた当事者としての側面があるので、その辺の歴史を知りたい方には貴重な証言だらけではないかと!その筋でもおすすめです。


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ではまた。